2013年度理事長所信

第62代理事長 棚橋 泰之

 日本が精神的、物質的に豊かで、安心して暮らせる国であり続けてほしいと私たちは願っています。しかし、現在の日本は、東日本大震災後の復興、経済、社会保障、教育分野など、過去に経験したことがないほどの課題に直面し、その課題は、国だけでなく地域に顕在化するものも複雑に絡み合っています。私たちは、それらが一向に解決に向かわないことに焦燥感を抱きながらも、東日本大震災後の復興に向かって懸命に行動する市民の姿から、地域で複雑に絡み合った課題を解きほぐし、市民自らの力で一つひとつ解決していくことの大切さを学びました。日本は多くの課題を抱えていますが、現在でも世界的に影響力のある国であることは間違いありません。そして、これまでの経験を踏まえて、慢性的な課題に直面している状態から、脱却する糸口が見え始めています。それは、それぞれの地域において、課題に対して市民自らが主体的に取り組み、共感で人の心に訴えかけ、更なる行動を喚起するムーブメントを起こすことです。

 (公社)岐阜青年会議所は岐阜市を中心とした地域において「明るい豊かな社会」の実現を目指し、「ひとづくり・まちづくり」運動を展開してきました。2006年には、市町村合併を始めとする地方分権の流れの中で、まちづくり運動ビジョン「アクティブコンパクトシティぎふ〜安らぎ 賑わい 助け合いのあるまち〜」を策定し、ぎふのまちで市民力・企業力・行政力が相乗効果を生み出し、まちの活力を最大化する運動を行ってきました。現在では多くの市民団体やNPO団体が主体的に活動を始め、ぎふのまちは少しずつ賑わいを取り戻し始めています。これを踏まえ、私たちは次のステップに進むために、新たなまちづくり運動ビジョンを策定しました。

「自然と産業とコミュニティの共生都市 ぎふ」
〜世界に誇れるひとの和〜

 私はこの新ビジョンを達成するために、次の二つを初期段階のまちづくりの要諦と捉えています。先ず一つ目に、市民が主体者となり、地域が抱える課題の本質を論理的・分析的に捉えるだけでなく、地域の現場で起きていることをしっかりと見つめ、人と語り、直感的・身体的に捉えること。二つ目に、多種多様な立場にある市民が持続可能な美しい理想の姿を思い描き、実現したいという情熱を共有し、地域に眠る資源を活用した魅力や仕組みといった新たな価値を創り出すこと。この二つの実践のプロセスが「創造力」であり、世界に先駆けて市民の力によって課題に挑戦し克服し、ぎふのまちの市民が世界を動かす原動力となり、ぎふのまちを世界に誇れる魅力あるまちに導くのです。

 先にも触れたように、私たちは東日本大震災後の復興に向けた市民の姿から、規律の良さや相手を思いやる心、やり遂げようとする気概など、日本人が古くから大切にしてきた価値観に立ち返ることができました。頭で考えるだけでなく、手・足・耳・鼻・口など身体全体を使い、そこから得た情報に対して、無条件に心で反応し「自分のできることから、まずはやってみる」という姿勢を学びました。また、その姿勢から生まれてくる直感的・身体的思考こそが、地域が抱える課題の本質を捉えていることに気づいたのです。だからこそ、変革の能動者たらん私たちは、この姿勢を地域で貫く必要があるのです。そして、市民と共に理想のまちの姿を思い描き、実現したいという情熱を共有し、地域に眠る資源を活用した新たな価値を創り出していくことが重要なのです。主役となるのは特定の専門家ではなく、一人ひとりの市民です。市民一人ひとりが「創造力」を高め、様々な課題に対して成果を生み出し、積み重ねることができれば、「明るい豊かな社会」の実現へと繋がると確信しています。

ぎふのまちに変化を創り出し、継続的な賑わいと新たな価値を創造しよう!

 岐阜JCはこれまで築いてきた市民やコミュニティとの協働関係や事業の範囲に留まらず、各々の地域において、新たな協働関係を構築することで、市民の視点で捉える課題の本質を理解する必要があります。そして、市民やコミュニティと共に理想の姿を思い描き、実現したいという情熱を共有し、地域に眠る資源を活用した新たな価値を創り出す「創造力」のある運動を展開していく必要があるのです。
 岐阜JCはスイーツを切り口に5年間、中心市街地に賑わいをもたらすために、市民、企業、行政と協働したまちづくり活動を行ってきました。その活動は地域との繋がりを深めるだけでなく、市民やコミュニティの主体性を引き出すきっかけとなり、今では様々な活動が中心市街地の中で行われています。中心市街地が賑わいを取り戻していく過程において、様々な市民やコミュニティが協働しながらプロジェクトを推進していくこと。そして、主体者同士の関係を深めることは重要な要素です。岐阜JCはこの経験を活かしながら、中心市街地が抱える課題を直感的・身体的に捉え、解決するための新たな価値を創り出し、実践します。岐阜JCがスポットを当てる地域に眠る資源は一つの切り口である必要はありません。主体的な市民やコミュニティが様々な角度からスポットを当てるコンテンツを企画し、それが提供されることで需要をもった人が惹きつけられることは、ぎふのまちの活性化の礎となり、波及効果を生むに違いありません。
 中心市街地だけでなく様々な地域においても、まちづくりを主体的に行っているコミュニティを発見し、新たな協働関係を構築していくことは、ぎふのまちが抱える課題を解決していく突破口になるのではないでしょうか。ぎふのまちには様々なスキルやノウハウといった強みをもった市民やコミュニティが数多くいます。また、自然、産業、歴史、文化など有形無形の資源が豊富にあります。岐阜JCが新たな協働の可能性を探り、これらを結びつけることで、新たな価値を創り出していこうではありませんか。お互いにできることできないことを認識し合い、補完し合いながら協働できれば、お互いの強みが相乗効果となって大きな成果を生み出し、世界に誇れるぎふのまちを創造できると信じています。そんな魅力的で実現可能な理想のぎふのまちの姿を思い描きましょう。

思い描いたことを形にできる「創造力」のある子どもたちを育もう!

 ぎふの未来を担う子どもたちには、理想の姿を思い描き、実現したいという情熱を共有し、新たな価値を創り出す「創造力」のある大人になってほしいと願います。しかし、大人が過保護になり、いつの間にか子どもたちには、人を頼り過ぎる習慣がついてしまい、自らの力で解決策を考え出す力やチャレンジ精神をもって行動する力が低下しているように感じます。更には人との関わりを避けることで、視野が狭くなり、価値観は固定化し、夢や目標をもてなくなっているように感じます。だからこそ、一つひとつの物事に対して途中で諦めたり、投げ出したりして、最後までやり抜けず、思い描いたことを形にできない子どもたちが増えてきているのではないでしょうか。
 子どもたちには、緊張感のある環境に身を置き、課題を豊富に提供してくれる実体験を通じて、自らの力で課題を一つひとつ解決していく経験を積んでほしいです。小さな成功体験を積み重ねることで味わう達成感や充実感は、自信へと繋がり、子どもたちが自らの強みを知る機会になります。時には自らの力だけでは壁を乗り越えられないこともあるかもしれません。そんな時には、仲間と協力し合いながら課題を解決していくことで、相手への思いやりの心や感謝の心を学び、価値観の幅を拡げてほしいです。そして、夢や目標に向かって、自らの強みを活かし、積極果敢に挑戦できる逞しい子どもに成長してほしいと考えます。また、子どもたちには、大人が社会の中で大切にしている価値観に触れることで、将来の理想の姿を思い描いてほしいです。将来の理想の姿を描けなかったり、根拠のない空想や漠然とした夢しか描けなければ、具体的な行動には移せません。社会環境を実体験することで、「あんな大人になりたい」と感じてもらい、働くことの喜びや自分の将来への期待感に繋げ、理想の姿を思い描き、実現したいという情熱を共有し、新たな価値を創り出す「創造力」のある人材になってほしいと考えます。
 子どもたちが現実社会に触れる環境を創り出すことは、学校教育だけでは難しかった新たな気づきや学びを提供できるだけでなく、地域の大人が、自らを省み、価値観を整理する良い機会となります。地域の大人として自らの生き様を示し伝えることが、子どもたちの価値観を形勢していく上で大きな影響を与えていることを自覚しましょう。そして、地域の大人としての担いを自覚し、自らのスキルやノウハウといった強みを活かした、青少年育成の形を創り出していきましょう。

新たな価値の創造!未来を切り開くことのできる「創造力」のあるリーダーになろう!

 経済的な単一化が進む中、地域と世界が密接に結びつき、誰もが創意工夫と努力次第で飛躍できる時代となりました。刻々と変化する外部環境に対して、企業は環境の変化に適応するために進化していかなければ、維持・発展することはできません。ぎふのまちの企業が、様々な課題を解決し、経営体力を高め、維持・発展していくことは、ぎふのまちの産業が充実することに繋がり、ぎふのまちが世界に誇れる魅力あるまちとなるのです。
 時代の変化と共に、リーダーの果たすべき役割は少しずつ変化し、責任も以前よりも増して重くなっています。リーダーには、物事を論理的・分析的に捉えるだけでなく直感的・身体的に捉え、理想の姿を思い描き、実現したいという情熱を共有し、新たな価値を創り出す「創造力」が必要です。そのためには、様々な経験や知識といった情報から価値観の幅を拡げると共に、自らの強みを知り、活かすことが重要です。「創造力」のある企業は、社会から必要とされる商品やサービスといった新たな価値を創り出すことで「この企業でなければならない」という絶対的な価値を得られるのです。だからこそ外部環境がいかに変化しても、その企業は維持・発展していくことができるのです。
 私たちJAYCEEは青年経済人の集まりであり、互いの強みや価値観に触れる機会が多くあります。私たちはこの機会を活かし、経営資質の向上に努め、自社を維持・発展させることで、ぎふのまちの経済に活力を与えていくことが社会的な使命だと考えます。そして、私たちは企業活動だけでなく、地域社会においても「創造力」を発揮することで、市民の心に訴えかけ、行動を喚起するムーブメントを起こすことができたなら、まち全体が発展し、ぎふのまちは世界に誇れる魅力あるまちとなると信じています。

プロセス重視の組織風土の継承と持続可能な組織への積極的な変革

 社会が多様化する中、公益団体である岐阜JCには、地域との繋がりを深め、より多くの市民やコミュニティに「ひとづくり・まちづくり」運動を発信し、直接的な成果を生み出していくことが求められています。しかし、経済状況の変化に伴い、家庭、会社、JCのバランスに悩み、葛藤しているメンバーが増えてきているように感じます。この現状の解決策の一つとして、限られた時間を効果的に使い、成果を生み出していくことがあります。そのためには、岐阜JCが継承してきたプロセス重視の組織風土をしっかりと守ること。そして、持続可能な組織への積極的な変革が必要です。プロセス重視の組織風土を守っていく大原則として、まずはルールを守ることが重要です。その上で、「侃々諤々の議論を重ねて合意形成していくこと」「仲間と共に積極果敢に挑戦し、成果を生み出していくこと」「仲間と達成感と感動を共有すること」この事業プロセスをしっかりとマネジメントしてください。

岐阜JCの魅力と存在意義を再確認し、誇りがもてる岐阜JCを創ろう!

 JCは世界規模の団体であり、私たちは自分が望みさえすれば、予想し得なかったような出逢いや多種多彩な環境の中で、「トレーニング」「サービス」「フレンドシップ」の本質を学ぶことができます。そして、私たちは多くのメンバーと激しくお互いの価値観をぶつけ合い、心を一つにして成果を生み出すプロセスの中で自分自身を磨き、同時に苦労や喜びを共有しながら友情を育むことで、かけがえのない友を創ることができます。近年、岐阜JCメンバーは、家庭、会社、地域、JCにおいて、何かしらの課題を抱えています。しかし、私は様々な課題を解決していく突破口こそ、岐阜JCで得られる学びや友の存在の中にあるのだと考えます。だからこそ、岐阜JCは私たちにとって、なくてはならない存在なのです。
 岐阜JCには61年の永きに亘る歴史がありますが、プロセス重視の姿勢は61年間普遍です。現在、岐阜JCがぎふのまちにとってもなくてはならない存在であるのは、諸先輩が心血を注ぎ、歴史と伝統を積み重ねてきたからです。私はそんな組織の一員であることを誇りに思います。そんな思いをメンバーにももってほしいと願います。それぞれの時代を彩った諸先輩の岐阜JCへの誇りに触れることで、あなたにとっての岐阜JCの存在意義を確立してください。そして、メンバー一人ひとりが「何のためにJCをやっているのか」を今一度深く考え、腹に落とすことができたならば、行動はより前向きなものとなり、共感で多くの人が自然と惹きつけられると思います。そんな人の心に訴えかけることができる「創造力」のある活動を行うことで、誇りがもてる岐阜JCを創ろうではありませんか。

あなたは何のためにJCをやっているのか

 青年経済人である私たちは、地域社会や企業活動、更には家庭において、物事を深く考え判断し、成果を創り出していく責任があります。青年経済人として自信をもって判断を下していくためには、自らの経験に基づく確立した価値観をもつことが重要です。岐阜JCでは、物事に対して、これまでの自分の固定化した価値観から判断を下すと思わぬ問題に発展してしまい、厳しい指摘を受ける機会が多くあります。自分自身と向き合うことで自らの課題が顕著となるだけでなく、行動規範や価値観を見つめ直す機会となり、それは自分自身を成長させるチャンスなのです。だからこそメンバーには、誰かがやってくれるだろうという他人事ではなく、楽な場所、安全な領域から一歩踏み出し、自らが理想とする姿と現実とのギャップに正面から向き合い、苦労しながら一つひとつ課題を解決していくことで、自らの価値観を確立してほしいのです。
 岐阜JCで青臭く侃々諤々の議論ができるのも40歳までです。その年代でなければできない経験を積み、自らを成長させるチャンスをその手に掴もうではありませんか。JC活動を行う中でうまくいかないこともあるかもしれません。しかし、人の成長は失敗から生まれます。挑戦して失敗して、そこからいろいろなことを学び、再び挑戦する。このサイクルが成長には重要なのです。何も恐れることはありません。自分をさらけ出し、強みを活かし、人と深く関わりながら、自分の限界に挑戦していきましょう。あなたが思い描く理想の姿を実現するために、目の前にある課題から目を背けず、仲間と力を合わせながら、課題を一つひとつ解決していくのです。一人ひとりの「創造力」がぎふのまちを世界に誇れる魅力あるまちに導くと信じて。

 

基 本 方 針

・プロセス重視の組織風土の継承と持続可能な組織への積極的な変革
・岐阜JCの魅力と存在意義を再確認し、誇りがもてる岐阜JCを創ろう!
・思い描いたことを形にできる「創造力」のある子どもたちを育もう!
・ぎふのまちに変化を創り出し、継続的な賑わいと新たな価値を創造しよう!
・新たな価値の創造!未来を切り開くことのできる「創造力」のあるリーダー
になろう!

 

全 体 事 業

青少年育成事業(仮称)
2014年度新入会員募集